独立行政法人、国民生活センターに寄せられる相談の中で、美容医療サービスの分野で包茎手術の相談件数が過半数を占めています。
相談内容として、
手術後の痛みがひどい、機能障害など後遺症、包茎手術を受けた後、縫合不全で尿道欠損して尿道再建した症例も報告されています。
他に高額な自由診療、即日施術を強く迫られたケース、不要と思われる手術を受けたケース等があります。
なぜ、美容医療サービスの中で、包茎手術に関する相談件数が突出しているのか考えてみたいと思います。
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原則、包茎手術にリピートは無い
日本は急速に少子高齢化しているのは周知の事実。そもそも、若い頃に包茎手術を受ける男性が多いのです。これが意味するのは、少子化によって包茎クリニックの患者争奪戦が激しくなるのは想像に難くありません。
しかも、包茎手術は男性にとって一生に一回あるか無いかの外科治療。
包茎手術はマーケティング用語でLTV(※)が高いとは言い難いビジネスモデルだと思います。
LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)
LTVは顧客の生涯価値を意味します。1人のお客(患者)さんが、包茎手術の美容整形外科と取り引き(治療)を始めてから終わりまでの期間が短く、もたらす利益も限定されます。
もちろん、包茎手術が成功すればリピート手術はありません。
ということは、包茎手術クリニックは包茎治療専門のクリニックとして、概ね技術レベルは高い傾向(技術レベルに疑問符が付く一部のアルバイト医師を除く。)はあるものの、1回限りの手術で完了するビジネス。
これは、売り切り商品を販売している会社と同じようなもの。
1回販売したら、次のお客さんを探し求めて広告を出し続けなければならないビジネスなのです。
少子高齢化や美容整形クリニックの増加等の要因により、クリニックの広告宣伝費が収益を圧迫して最悪、資金繰りに行き詰まるケースがあります。
経営環境が悪化すると、技術レベルが高いとは言い難い医師による手術、オプション手術の強要、即日手術の強要等の問題が増えてくるのではないでしょうか。
包茎手術の施術方法にはいくつかありますけど、標準的な仮性包茎の手術であれば50万円、80万円なんて手術料金は有り得ません。それは、考えられません。そんな大金を吹っ掛けるクリニックがあるならば、まるでアッチ系のぼったくりバー以上です。
国民生活センターに寄せられる相談の中で、包茎手術に関する内容が多いのは、包茎手術専門クリニックのビジネスモデルが飽和点に達しているのが原因の1つであると考えられます。
あの高須クリニックの院長が包茎手術の世界を切り開いた開拓者とも言われています。昔は、包茎手術が大忙しだったようです。それほど需要が多かったのでしょう。しかし、今は日本の人口構成からして昔とは違います。
診療科目を増やす
医師免許さえ持っていれば、一通りの医療行為ができます。クリニックの看板に書かれている「美容整形」に「薄毛治療」(AGA-男性型脱毛症、FAGA-女性男性型脱毛症)や「脱毛」を加えることができます。
AGA, FAGA治療や医療脱毛の大きな特徴はリピート性がある治療。
30分から1時間以内の手術で終了する包茎手術とはワケが違います。
当然、薄毛治療と脱毛処理は1回の治療や施術では完了しません。将来にわたり、半年、1年、2年と患者さんとお付き合いをしながら治療、施術が継続します。患者負担は大きくなりますけど、クリニックにとってはこれらの医療のほうが断然LTVが高くなります。
毎日、広告を出して1回限りの患者を集めるより、患者さんとコンスタントに付き合うことができる医療の方がクリニックの経営が安定します。しかも、売上に占める広告宣伝費の圧縮が可能になるかもしれません。
先ほどの話しで、売り切り商品を売るより、例えばリピート性がある健康食品でも売った方が経営内容が改善される可能性があるのです。ここで、営業や販売の経験がある方は大きく頷いているかもしれません。
売り切り商品を販売し続けるとなると、営業サイドは日々、新規客を探し続けます。高額商品であれば、売れたら利益が取れます。しかし、そうではない製品ならば、永遠と新規客の開拓が続くのです。
だったら、習慣性があるカフェインを含むコカ・コーラやコーヒーでも売った方がまだリピート性があります。
ABCクリニックのAGA治療
すでにABCクリニックはAGA治療をスタートさせています。
今のところ、AGA治療薬の処方のみのようですけど、将来的なクリニックを取り巻く環境の変化によっては発毛メソセラピー等、幅広く育毛、発毛治療を広げていく可能性はあるでしょう。
また、言わずと知れた湘南美容クリニックはAGA, FAGAと医療脱毛クリニックを破竹の勢いで全国に展開してきました。
こればかりは包茎手術クリニックの総院長の経営方針次第ながら、「AGA、FAGA治療、脱毛処理」の3点セットのニーズは拡大しています。
2018年現在、3点セットを備えたクリニックは主に東京都、神奈川県横浜市、名古屋市、大阪府、福岡県の大都市に集中しています。
一方、人口100万人に満たない都市は、未だ3点セットの空白地帯と言えます。人口100万人に届かない都市では、クリニックの経営者は採算ベースに乗らないと経営判断を下しているのかもしれません。
AGAとFAGAクリニックでAGA治療薬の処方と発毛メソセラピー治療であれば、医療機器と器具の設備投資額は卒倒するような金額ではないと思います。
今後の包茎手術クリニックの診療内容の拡大に期待したく思いますし、それは地元住民が待ち望んでいる医療サービスであることは大きく間違いはありません。
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